上がる?下がる?マイナス金利の株価への影響と効果の解説

2016年2月に日銀がマイナス金利という歴史的な金融政策に踏み切り、2017年8月で1年半が経過しました。

2%の物価安定の目標は維持されていますが、現状は達成しておりません。

そんな中、マイナス金利政策について考えてみます。

マイナス金利の株価への影響や今後の予測などまとめ、今後の投資に活かせていけたらと思います。


まず、マイナス金利とはどういうものだったのか簡単に確認していきましょう。

 

■マイナス金利とは
マイナス金利とは日銀が行った金融政策の一つで、日本銀行と各金融機関における金利の話となります。

これまで、日銀は黒田総裁が就任してから2%の物価上昇目標を掲げ、市場にお金が回るように金融緩和政策を行って来ました。

しかし、目標であった2年で2%の物価目標は実現しなかったこともあり、マイナス金利を導入することになりました。そのマイナス金利を簡単に説明すると、各金融機関は日本銀行に口座を持ちお金を預けています。

この日本銀行へ預けている分のお金には金利が付いていましたが、マイナス金利導入以降は逆に利子を払わなくてはいけない状況になります。

メガバンクを中心とした各金融機関は、このマイナス金利政策により日本銀行へお金を預け利子を払うより、企業などへの貸し出しや投資などにお金を回す方がいいので、必然的に市場へお金が回るようになります。

このマイナス金利政策によりお金が市場に回るので、景気を刺激し、デフレから脱却しようというのが目的です。

■マイナス金利の導入時期
2016年1月29日にマイナス金利政策の導入を決定
2016年2月16日からマイナス金利が導入

マイナス金利の適用範囲については

・金融機関から預かる当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を適用

マイナス金利は個人には適用される訳ではなく、各金融機関に適用ということを覚えておけばいいでしょう。

■マイナス金利の狙いは円安株高
日本銀行上記のようにマイナス金利により、市場にお金を回すことを狙っていましたが、円安株高も狙っていました。

マイナス金利と為替の関係としては、
日本銀行がマイナス金利を導入すれば、日本の金利が低下し、日米の金利差が拡大することで円が売られ円安になります。

また、日本の国債長期金利を0%目標にすることで、投資家は円をドルに換え米国債へと資金が向かうようになるので、ドル高円安が起きます。

円安になれば、輸出株の業績UPに繋がり最終的には株高にもなる。
というのがマイナス金利の狙いです。

ただ、マイナス金利を導入した後は、思惑通りの円安株高とはならず、円高株安を引き起こす展開になりました。

■マイナス金利後の株価の動き

では、マイナス金利によって狙いとは逆の円高株安になりましたが、その動きを詳しく見ていきましょう。

■マイナス金利の影響
2016年1月29日、日銀黒田総裁によりマイナス金利の導入を発表

場中に発表されたこともあり、発表直後は追加緩和との思想から一気に買いが向かいました。
しかし、マイナス金利政策の内容が次第に伝わることでその後は売られる展開に。

それにより日経平均株価は1日で871円の値幅で動き、乱高下の展開。

その後は銀行株を中心に売りが広がり、日経平均株価は下落。為替相場円高のへと推移していきます。

円高株安へと向かったのはマイナス金利の影響もありましたが、世界的な株安や原油安の影響もありました。

また、イギリスのEU離脱問題も世界的に相場を冷やし株価を下げる要因となり

EU離脱が決まった6月24日には

為替は一時99.08円

日経平均株価は一時14864.01円

と最安値を更新する展開となり、円高株安へと大きく動きました。

黒田日銀総裁はマイナス金利により、円安株高を狙っていましたがその逆の流れとなりました。

■マイナス金利で効果があったセクター
マイナス金利で特に影響がある業種としては

・金融セクター

・不動産セクター
などがメインで、この中でもマイナス金利の恩恵を大きく受けたのは、不動産セクターでした。

マイナス金利により各金融機関は住宅ローン金利引き下げを行い、その結果借り換えが急増。

借り換え申し込みは前年同月比、3.6倍増と大きく伸ばしました。

このような動きもあり、不動産セクターやJ-REIT不動産投資信託)は上値を伸ばす展開へ。

東証REIT指数日経平均株価が下げる中、マイナス金利発表前の1686.53ポイントから、3ヶ月後には1981.94ポイントへと上昇。

それらのことから、マイナス金利はお金を借りる個人や企業などには効果があり、不動産セクターも効果はあった形になります。

もう一方、マイナス金利の影響をダイレクトに受けるのが銀行株。
大手銀行を含め地方銀行株までマイナス金利発表直後は大きく下げました。


■マイナス金利の今後

マイナス金利の導入によって為替、株価共に序盤は影響がありましたが、今後はどのような影響があるのか考えてみます。

■先にマイナス金利を導入している国の動向
日本におけるマイナス金利の影響を考えていく訳ですが、日本より先にマイナス金利を導入している国を例に見ていけば、今後を予想できる可能性があります。

日本より先にマイナス金利を導入している国
2014年6月5日:欧州中央銀行(ECB)
2014年12月18日:スイス国立銀行
2014年9月4日:デンマーク国立銀行
2015年2月12日:スウェーデン国立銀行
2016年2月16日:日本銀行

日本の後にマイナス金利を導入した国はハンガリー国立銀行

この中でも、まず見ておくのがECB

欧州中央銀行ECBは預金金利をマイナス0.1%に決定。この数値は日銀の措置と類似しております。

このECBが導入したマイナス金利によりその後どうなったか見ると、マイナス金利幅は0.1%でしたが、その後マイナス0.2%マイナス0.3%、現在はマイナス0.4%まで追加利下げされています。

また、その他スイス、デンマークスウェーデンもマイナス金利の幅を拡大していますので、日本でも追加の利下げがある可能性があります。

■個人口座にも適用されるマイナス金利
これは日本より先にマイナス金利を導入しているスイスでの取り組みになりますが、大手銀行として初めて、個人顧客にもマイナス金利を適用すると発表。

この動きをしたのはスイスの郵便貯金を運営するポストフィナンスで、100万スイスフラン(約2億円) 以上の大口預金を持つ個人顧客を対象としました。

2017年2月1日よりマイナス1%の金利が適用。

スイスでのマイナス金利は、マイナス0.75%と金利の幅を拡大していることも、要因としてあり個人顧客まで広がっています。

これらの一例からもあるように、日本でもマイナス金利幅が拡大し、個人顧客にまで広がる可能性はあるかもしれません。

ただ、マイナス金利導入国の動きを見てはっきりと言えるのは、マイナス金利政策はすぐに縮小、終了するという動きは考えにくい為、日本でも長期化すると考えられます。

■まとめ

日銀黒田総裁が2016年に導入したマイナス金利は、お金を借りる個人や企業にとっては金利が低くなるため大きなメリットがありますが、金融市場は思うように動いてくれません。

今後の不動産セクター、住宅ローン金利などにも注目ですが、追加の利下げがあるのかその動向は特に注目です。